actors' playground 12th w/井上裕朗+西村壮悟
日程: 2019/11/6〜11/15
使用戯曲: 『人形の家』by ヘンリック・イプセン 『人形の家 Part.2』by ルーカス・ナス
参加人数: 18人
前回から約半年ぶりの開催になります。今回は少し期間を長くしての拡大版です。
僕自身まだまだ修行の身、一介の俳優にすぎません。俳優には、俳優にしか分かり得ない感覚や抱えている問題が確実にあります。思考回路や視点の異なる演出家には頼れない、俳優が自立して立ち向かうべき課題があります。同じ荒野に立つ俳優同士が集まって、それを共有し、同じ目線からじっくり時間をかけてそれと取り組みたい。それがこの「遊び場」のテーマです。
僕は基本的に(自分が俳優として関わる場合)、人間同士の深くて濃い関わり合いが描かれた、物語性の強い、オーソドックスな「会話劇」を好んでいます。そして演技のアプローチの仕方としても、オーソドックスで奇をてらわない、シンプルで繊細で、それでいて力強い演技が好きです。多様な演技スタイルが乱立する中、こういった「地味な」タイプの演技は、もしかしたら傍流なのかもしれません。でも、同じような好みの人たちも決して少なくないと思います。なので今回そういう人たちが集まった場で、「会話をする」(つまり「話すことによって相手に明確な影響を与え、それを聞くことによって明確に影響を受け変化する」)ということにはっきりと的を絞って、シンプルでど直球の演技をストイックに追求できたらと思っています。どうすれば、虚構の世界の中で、自分ではない人間として確かに存在することができるのか……「場/状況」「他者」「自分自身」「言葉」とゆっくり丁寧に出会いながら、ひとつひとつ「物語」を立ち上げていくプロセスを共に体験できたらと思っています。
他者と関わることはそもそも簡単なことではありません。しかも良質なドラマにおいては、人と人との関わり方が日常のそれよりも深く、濃く、ときにエグいものであったりします。日ごろ目を背けていたいこと、避けて通りたいようなことも、芝居の中にはしばしば登場します。僕たち俳優も(一般的に)弱い人間ですから、そのような「危険地帯」に足を踏み入れることへの「恐怖」があります。無意識に逃れようとします。防御します。こういったことも、演技において「会話」を成立させることを難しくする要因です。それをどう乗り越えていくか。例えばそんなようなことについて、全員参加で僕たちの抱えるさまざまな課題を掘り起こし、解決に向けての仮説を立て、実験をし、結果を検証し、共有できるものは共有し、新たに発見できるものは発見し、(僕を含めた)それぞれのキャパシティを少しでも広げることにつなげられればと思っています。
自らを信じ、相手を信じ、物語を信じ、言葉を信じ、自らを防御したり飾ったりすることなく、丸裸でそこに存在し、他者や世界と対面し、受け入れ、その上で関わりを持つ。それはとても難しく、怖ろしいことでもあります。「役」という鎧を着ずに、書かれた「物語」の中に逃げ込まない。「自分自身」を最大限に「使って」役を演じ、物語を立ち上げる。そのことが「俳優」にとって最も大切であり、最も難しいことだと僕は信じています。嘘であることを受け入れると同時に、嘘をつくことに徹底的に抗う。そのためのステップを、短い期間の中ではありますが、確実に進めてみたいというのが目標です。
具体的には、これまで同様、みんなでシアターゲームをやったり、さまざまな議題についてディスカッションしたり、戯曲を使ったシーンスタディをしたり、、、という内容を考えています。シーンスタディでは、課題戯曲の各シーンで配役を決めて(シーンによって1役を何人かで分割して)最終日に作品全体を通して発表することを目標にします。課題戯曲についてはいくつかの候補を考えていますが、応募者の顔ぶれを見て最終的に決めようと思っています。詳しくはお問い合わせください。
そして今回は、俳優仲間であり、自らマイズナーテクニックをベースとしたワークショップを開催している西村壮悟くんにも参加してもらうことになりました。期間中の数日間(2日ほど)を使って、彼の進行のもとでワークを行ない、それをシーンスタディに活かしていけるようなメニューを考えています。さまざまな方向からアプローチすることによって、気づきや発見の可能性は大きくなると思います。初めての試みなので僕自身とても楽しみです。
始まる前、期間中ともに、準備に多くの時間と労力を割いて頂くことになると思います。俳優だけが集まった「遊び場」は、お互いのことが誰より見えて分かり合えるので、楽しく刺激的でもあり、時にタフなものでもあります。柔軟で、勇敢で、熱意ある方々からのご応募、心よりお待ちしています。ご質問・ご相談などあればお気軽にご連絡ください。
たくさんの出会いを楽しみにしています。
井上裕朗
裕朗さんの演劇に取り組む姿勢は、とてもまっすぐで、きっと楽ではないけれど、その分返ってくるものが多いのだと思います。僕は根性論や、人格否定につながるような一部の「ダメ出し」は嫌いですが、結果的には芝居作りにおいても、「その人」が出てくるのかもしれない、裕朗さんを見ているとそんなことを考えたりします。
僕が今回できればと思うのは、参加者の皆さんのお手伝いをすること、伴走者となることです。
具体的には、「修行」ではなく、マイズナーテクニックをベースとした「技術」を元に、相手と関わることを提案します。マイズナーテクニックはアメリカで生まれた演技術だけあって、相手に向かっていくことを大事にしています。相手をよく見て聞き、そこから生まれた衝動を抑えることなく出し、反応します。恐れや諦めもありながら、それでも他者を必要とする──矛盾さえ孕む「人間」を演じるための技術を通して、より豊かな芝居作りを探求するサポートをしたいと思います。
西村壮悟
<西村壮悟プロフィール>
新国立劇場演劇研修所2期生修了。マイズナーテクニックを柚木祐美氏、スコット・ウィリアムズ氏から学ぶ。主な出演作品に『アルトナの幽閉者』『うれしい悲鳴』『従軍中のウィトゲンシュタインが(略)』『サロメ』『雨』『真田風雲録』など、蜷川幸雄氏、栗山民也氏、宮田慶子氏、宮本亜門氏、上村聡史氏、谷賢一氏、吉田小夏氏、広田淳一氏らの演出作品に出演。文化庁新進芸術家海外研修制度で2017年から約一年間ロンドンに留学。
actors' playground 12th w/井上裕朗+西村壮悟
■日程: 2019/11/6(水)~11/15(金)(計10日間)
■時間: 12:00~21:00(日によって変更の可能性あり)
■場所: 都内某スタジオ
■参加費: (A参加) 25000円/(B参加) 18000円 (スタジオ代、その他諸経費含む)
■応募資格:
俳優、および、演出家(俳優と同じ立場で同じことをやって頂きます)
■募集形式:
A(シーンスタディメンバー)
期間中の10日間、継続して固定のペアを組んでひとつのシーンに取り組んで頂き、リハーサルを繰り返しながらシーンを育てていく。実際にシーンを演じて頂くことを含めた参加
B(サポートメンバー)
シアターゲーム、ディスカッション、本読みなどはAと同じように参加して頂くが、シーンスタディに関しては、他の俳優たちが演じるシーンを「見る」という形で参加して頂く。1日単位での参加も可能(参加費は日割りのような形で頂きます)
■応募方法:
以下の項目を明記の上、actorsplaygroundfrom2015@gmail.comまでメールください。
1. お名前(ふりがな)
2. 性別
3. 年齢
4. ご連絡先(電話番号・メールアドレス)
5. 写真(顔が分かればどんなものでも良いです。僕と面識ある方は不要です)
6. 期間中のNG(遅刻・早退・欠席希望日などあれば)
7. 希望するコース(A or B or どちらでも可)
■応募締切:
先着順で受け付けます。定員を超えた時点で締め切りとさせて頂きます。
直前にオーディションや急な仕事など入ることもあると思うので、応募後のキャンセルも受け付けます(ただしA参加の場合は、シーンスタディのチームを組む関係上、初日の10日前までとさせてください)全日参加できない場合も出来る限り調整しますのでご相談ください。
以上、よろしくお願い致します。
Comments